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着実に技術に磨きをかけて。小さな積み重ねが大きな変化に至る

今回の先達:佐野曜子さん(53歳)、佐野猛さん(56歳)

(ガラス作家、 Glass Studio SANOSANO主宰)

聴き手:山川純子(ライフキャリアアドバイザー/捨てるキャリアコンサルタント)

佐野家の愛犬バウと猛さん

曜子さん:能登のガラス工房で働いているうちに、自分の作品を創りたいという欲が出てきました。そう思ったときに、きちんと基礎を学びたいと考えて、ふたりでオーストラリアに留学しました。作品を創ったりレポートを書いたりしているうちに、ガラス作家としてやっていけそうだという自信を得ることができました。

猛さん:そこで学んだ表面加工の技術が、じっくり物事に取り組む曜子さんのペースに合っていたんでしょうね。そこでは、技術を学ぶだけではなく、なぜガラスに携わるのか、どんな作品を創りたいのかということもしっかり考えさせられるんです。それも良かったと思います。「織の器」の技術は、すでに在学中に完成されていたと言えるかもしれません。

曜子さん:確かに、ずっと同じようなことをしてきましたが、そのコアになっているのは、オーストラリアの大学院で学んだことですね。

Q.同じようなことといっても、傍からは、作風が変化し続けているように見えますよ。

曜子さん:変化を感じていただけているとしても、それはほんの小さな違いにすぎないんです。私としては、大きな変化にチャレンジするよりも、同じことを淡々と続けていきたい。そして、元気なかぎり作品を創っていきたいですね。

猛さん:何かを表現したいと思ったときに、それを実現できる技術を持っているかどうかは大事なことです。私は、新しい技術にチャレンジしても一定のところまでやると飽きてしまうのですが、同じことを長くやり続けることで作品が大きく変化するということを曜子さんから見せられて刺激を受けています。

Q.猛さんご自身は、今までに何か限界を感じるようなことはありませんでしたか?

猛さん:幸いこれまでにスランプもありませんし、今のところ制作に影響を与えるような体力の衰えは感じていません。

作家としては、見ただけで佐野猛の作品だとわかってもらえるような個性的なものを創りたいし、そのためにどんどん新しいことにもチャレンジしていきたいと思っています。好きなことを一生の仕事として選べたことは、幸せなことですね。

<インタビューを終えて>

タイプの違うおふたりが刺激を受けあってアーティストとして進化をしてきたことが伺えました。もともと自然体で製作を続けてきた猛さんに対して、自分らしさをここ数年で見極め受け入れた曜子さん。

自分は自分でいいと思い定めるのは勇気がいることだなと、曜子さんのお話を伺って改めて思ったしだいです。

職業人として基礎を学び(守)、様々な可能性にチャレンジ(破)した後で、自分のスタイルを確立する(離)というキャリアの流れにおいて、ミドルの課題の1つは「離」を実現することではないでしょうか。

それには勇気が必要ですが、長い職業人生の後半を充実させるには、まず自分のスタイルを確立することが大事なことですね。

佐野曜子作 織の器

佐野曜子作 織の器

佐野猛作 ガラス器

佐野猛作 ガラス器

<プロフィール>

佐野 猛

法政大学社会学部社会学科卒業

オーストラリア国立大学キャンベラ美術学校ガラス科大学院修了

能登島ガラス工房などを経て、'98年にGlass Studio SANOSANOを設立

受賞歴:第49回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞、「国際ガラス展・金沢2007」審査員特別賞等 収蔵:オーストラリア国立大学キャンベラ美術学校、山口県 小野田市、富山市 他

佐野 曜子 成蹊大学文学部英米文学科卒業

オーストラリア国立大学キャンベラ美術学校ガラス科大学院修了

自動車メーカー勤務、能登島ガラス工房などを経て、'98年にGlass Studio SANOSANOを設立

受賞歴:「第3回清州国際工芸ビエンナーレ」(韓国)銅賞、第55回日本伝統工芸展 NHK会長賞など

収蔵:コーニングガラス美術館、六本木ミッドタウン、富山市 他

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