プレッシャーを感じ続けた創作活動。50歳を過ぎてようやく独自の境地に
今回の先達:佐野曜子さん(53歳)、佐野猛さん(56歳)
(ガラス作家、Glass Studio SANOSANO主宰)
聴き手:山川純子(ライフキャリアアドバイザー/捨てるキャリアコンサルタント)

富山でガラス工房を営む佐野ご夫妻。曜子さんとは、会社にお勤めされていたころから30年来のお付き合いです。東京近郊のギャラリーでおふたりが作品展を開くときには、都合がつけば足を運んできました。
数年前の曜子さんは、これからの方向性に迷って少し疲れているような様子が見受けられたのですが、昨年お会いした時には、これまでにない作風のガラス器も手掛けられ、「まだまだやれるわ」と爽やかな表情でおっしゃいました。
この間にどのような変化を経験されたのかお伺いしたく、おふたりにインタビューを申し込みました。
☆
Q.前々回と前回とでは、お会いした時の様子がずいぶん違いますが、この数年で仕事の仕方や考え方に変化がありましたか?
曜子さん:そんなに違って見えましたか。自分では気づいていませんでした。
数年前といえば、体調が良くなかったのに、仕事も家事も完璧にこなそうとしてうまくいかず、気分にも大きな波がありました。猛さんにもあたったりして、大変だったんじゃないかな。
猛さんのように新しいことにチャレンジしなければと思い続けてきたのですが、どこかで自分の可能性を諦めたというか、私は私のやり方をしていこうと思ったんですね。
猛さん:4年前、自宅に工房を併設して、3年前に犬を飼い始めたことも影響しているんじゃないかな。
曜子さん:そうですね。それまでは、繁忙期には12時間ガラスづくりに没頭したり、仕事に集中する密度の濃い時間の使い方をしていましたが、朝夕1時間ずつ犬を散歩させながら、創作活動に関することやそれ以外のことも、ふたりでゆっくり話すようになりました。犬がいることで、強制的にでも時間や気持ちにゆとりを持つようになったんですね。
それから、仕事でも家事でも自分ひとりでやろうと思わなくなって楽になりました。たとえば、作品に新しい技術を取り入れるように提案された時、以前なら自分で何とかしようと努力していましたが、今は猛さんに協力してもらうとか。
Q.ところで、曜子さんは会社勤めをされていて、ガラス作家になるというのは、大きな決断だったのではありませんか?
曜子さん:最初は趣味で始めたことでした。猛さんと人生を共に歩こうと決めたときも、自分はアシスタントでよいと思っていたんですね。ところが、能登のガラス工房で働いているうちに、自分の作品を創りたいという欲が出てきました。

(次回に続きます。)
後編は「着実に技術に磨きをかけて。小さな積み重ねが大きな変化に至る」