出向、転籍。一時は落ち込んだけれど、50代は幸せなキャリアだった
今回の先達:山崎隆司さん(62歳)
(ラッキーコーヒーマシン株式会社 取締役営業統括本部副本部長
/一般社団法人アリーナスポーツ競技会 理事・事務局長)
聴き手:山川純子(ライフキャリアアドバイザー/捨てるキャリアコンサルタント)

プランドハップンスタンス(計画された偶然あるいは計画的偶発性)理論。
これは、米国はスタンフォード大学のクランボルツ博士が提唱したキャリア論の1つです。
キャリアは決して自分の思い通りになる訳ではなく、ときに偶然が左右することがあります。想定外のできごとを楽しみキャリアの発展に活かす、積極的に偶然を呼び込むことで人生の質が高まっていくという考え方です。
プランドハップンスタンス理論は机上論ではなく、成功者のキャリアを実証的に分析し、導き出された理論です。今から10年以上前に私が米国の学会でクランボルツ博士の講座に参加した際、「この中で社会人になったときに自分が考えていた通りの仕事を今もしている人はいますか?」という問いかけがありましたが、誰の手も上がらず、ここに計画的偶発性理論の汎用性が証明されたということがありました。
今日ご紹介する山崎隆司さん(62歳)は、プランドハップンスタンス理論を体現された方のおひとりではないかと感じました。自動車メーカーからスポーツ業界へ、そして今は、食品関連の企業の役員としてご活躍されています。
休日にはベンツを乗りこなし、日本全国を営業開拓の仕事で飛び回っていると聞くと、華麗な転身を遂げられたように外からは見えますが、出向の内示で落ち込んで自暴自棄になったり、環境の急激な変化で体調を崩し、入院もしたそうです。
さて、山崎さんが歩んだキャリアを振りかえってみましょう。
☆
山崎さん:私、今回インタビューを受けることになり、改めて自分の職歴を振り返ってみました。ずいぶん転職を繰り返したものだと、自分でも驚くばかりでした。
Q:とはいえ、日産自動車から日産スポーツプラザへの出向、コナミスポーツへの転籍というのは一連の流れですから、転職というよりは異動のようなものですよね。
山崎さん:同期入社の同僚に比べて課長昇進が遅れていたタイミングで出向を言われたので、正直自分のキャリアは終わったなと感じ、心が折れましたよ。
Q:これまでの華やかなご活躍を伺いますと、打ちひしがれたままではなかった。どこかで復活の契機になったことはあったんですか?
山崎さん:日産スポーツプラザの所在地である品川区から、日産として区に貢献してほしいと期待されて、その期待に応えようと様々な企画を作り、提案しました。それが、提案営業の原点になり、その後のスポーツ業界での案件獲得につながっていきました。
この時の仕事から、パブリックビジネスの醍醐味や手ごたえを得ることができました。その後、地方自治法の改正で、民間企業が公共施設を運営する指定管理者制度ができて、公共施設の運営を受託する流れができたんですよ。それで上げ潮に乗れました。振り返ってみると、50歳代は幸せでしたね。
日産時代に、企画書を書いたり、プロジェクトリーダーを務めたりした経験が生きて、何しろ、国や都など公的機関や特殊法人への提案は連戦連勝負けなし。日産スポーツプラザからの実績を合算すると、2013年までの約20年間で受注累計額は、360億円にもなるんですよ。
Q:すごいですね! 日産の時にも車の販売実績等では何度も社長賞を受賞されていて、山崎さんの営業力は伊達じゃありませんからね。いまだに個人向け年間販売台数の記録は日産のなかで破られていないそうですね。
そうすると、不本意な出向から始まったスポーツ業界でのキャリアは、順分満帆だったわけですか?
(次回に続きます。)
