

ミドルの転職では若いという印象が裏目にでることも
40代のご相談者に対して、年齢の割に職務内容や職業意識が若いなと感じることがあります。転職を希望する場合、求人側に年齢相応の経験に対する期待がありますので、若いという印象が若々しさとして受け止められればプラスに働きますが、経験の浅さと受け止められれば不利な評価を受けてしまいます。 40代ともなれば、職位は問わずリーダーシップを発揮することが求められる世代です。与えられた仕事は期待以上の成果を出せるという受け身な発想では、中途採用の求人への応募者としては少々物足りないかもしれません。自分なりの仕事に対する価値観や信念を実現しようとしている人や、自分のリーダーシップやコミュニケーションのスタイルについて理解して活躍している人は頼もしく見えます。 職業人としては、知識と経験が相まって成長していきます。「優秀かもしれないけれど、妙に幼い」という印象を与える方は、経験を通して職業意識を深めるという経験が不足しているのかもしれません。知識は研修や自己啓発によって補えますが、経験を通して考えたり経験に意味を与えたりすることは、一般的には、上司や先輩と仕事を共に


幸せに働くということ
昨日、特別公開講座「幸福学×経営学」を聴講してきました。慶應義塾大学ヒューマンシステムデザインラボとホワイト企業大賞企画委員会が共催したものです。500席の藤原洋記念ホールがほぼいっぱいになるほどの盛況で、主催された方々が驚かれていたほど。私も、幸福学と経営学のクロシングに興味を持って参加しました。 前野隆司先生からは、幸せの心的要因を因子分析したところ、4つの因子を見いだせたというお話がありました。 それは、 1.自己実現と成長・・・天命、天職、強み、自己肯定感 2.つながりと感謝・・・感謝、利他、許容、承認、信頼、尊敬、自己有用感、愛 3.まえむきと楽観・・・前向き、楽観性、自己受容 4.独立と自分らしさ・・・独立、自分らしさ 大変共感できるお話しでした。我田引水になってしまいますが、私がサービスとして提供しているのは、まさにこの幸せに必要な要素だったのだなと、改めて確認することができました。 たとえば、顔の見える職務経歴書というのは、転職のツールではありますが、その方の強みや自分らしさを表現することを通して、自己有用感を高め、自己受容する気


キャリア権を使うとは、自律的にキャリアをマネジメントすること
キャリア権という言葉をご存知でしょうか。 「個人がキャリアコンサルティングを受ける権利」(慶應義塾大学 花田光世名誉教授)とか、「働く一人ひとりが、その意欲と能力に応じて、自己の望む仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利」(法政大学 諏訪康雄名誉教授)とか、言われています。 諏訪先生は、憲法の基本的人権や2011年当時の労働法制を根拠として説明されていましたが、花田先生がおっしゃるように、職業能力開発促進法の改正(2016年4月施行)によって、より明確な権利として捉えやすくなったといえるかもしれません。 要は、「キャリアコンサルティングを受けると、職業生活での幸福が実現しやすい」ので、個人は自分の、企業は社員のキャリア形成にきちんと取り組んでほしいということなのですね。 エンプロイヤビリティやポータブルスキルという用語とともに、自律的キャリア形成の必要性は、この十数年間、言われ続けてきましたが、情報感度やキャリア意識の高い人だけではなく、すべての働く人、働ける人が、自分のキャリアに責任をもち、職業人としての能力の維持向上に努めてもらいた


目標とモデル。いくつになってもあるといいもの
南谷真鈴さんが日本人初、世界最年少でエクスプローラズ・グランドスラムを達成したというニュースがありました。ニュースの画像を見ますと、溌剌と元気な方で、まったく気負った様子もなく、もう次の冒険のことを考えているようでした。「いつも次は何をしよう?と考えていると、達成した目標は通過点になる」とおっしゃっていたのが印象的で、メモを取ってしまいました(笑) ご本人の輝くような笑顔からは、挑戦することが楽しくて仕方がないということが伝わってきましたが、まだ20歳でいらっしゃいますので、これからどんな記録を作っていかれるのか楽しみです。 冒険家、といえば、何人かのお名前が思い浮かびます。植村直己さん、堀江謙一さん、白石康次郎さん、三浦雄一郎さん。それぞれの生き様やご活躍には心を打たれます。 三浦雄一郎さんが、80歳で3回目のエベレストの登頂に成功されたニュース、今思い出しても、その時の驚きがよみがえってきます。三浦雄一郎さんに対する尊敬の念と同時に、人間はすごいことができるものだという誇らしさと言ったらよいのでしょうか。 その三浦さんでさえも、世界七大陸最高


言い訳 あるいは立場の表明
キャリアの話題というのは、いたって個人的でありながら、ある集団や組織の問題でもあり、社会的な問題でもあります。私のような正確を期したいがために優柔不断になってしまう書き手にとっては、そのことが悩みの種になってしまいます。 たとえば、ある世代の人についてイメージしながら文章を書いていても、「そうは言っても、当てはまらない人もいるよね」と考えてしまい、多岐にわたる例外について書きたくなってしまうのです。しかし、そうすると、「何を言いたいのかがさっぱり伝わらなくなってしまう」と考え直して、例外には目をつぶって書き進めるということは、毎回のことです。 ご相談者一人ひとりが異なる状況に置かれていることもそうですが、新しい集まりに足を運ぶと、同じテーマであっても、参加者が所属している企業によって、大いに異なる状況であることがわかったりします。 類型論は嫌いだという知人がおり、何かのラベルで人を決めつけたくないという気持ちはとても良く分かります。が、ある人の性格特性や興味関心を短時間で理解するのに、類型論とても役に立ちます。類型論は、単なる決めつけではなく、統


外的キャリアとか内的キャリアとかの話 ~顔の見える職務経歴書
ごく簡単に言ってしまうと、外的キャリアは、外から見てわかる職業上のラベル(所属、職務、職位など)、内的キャリアは、自分にとっての仕事の意味(働きがい、生きがい、価値など)のことです。 転職活動においては、比重の違いはあるにしても、外的キャリアと内的キャリアの両方が問われます。わかりやすいのは、志望動機。どんなに外的キャリアが立派でも、志望動機(内的キャリアの表現のひとつ)が薄弱であれば、画竜点睛を欠くことになって、不採用の憂き目にあうことは珍しくありません。 職務経歴書には外的キャリアさえ書けていればよいのか、といえばそうとも言えません。特に40歳以上のミドルになってくると、書きたいことが増えてきますので、1~2枚に収めようとすると、情報を取捨選択する必要がでてきます。 その時に、どの情報を残すかの判断基準は2つあります。1つは、応募先企業が求める人材要件に一致している情報。もう1つは、自分にとって意味のある情報です。 ところが、自分にとって意味のある情報を選ぶこと、すなわち内的キャリアに準じた情報の取捨選択を行なうことを、多くの方は難しく思われ


東芝にみる法人にとっての外的キャリア、内的キャリア
先週11日に東芝が2016年4月~12月期の決算発表を行いました。 2回延期したのち、監査法人の承認が得られない状態での発表で、上場廃止を回避するために苦しい対応が続いていることが印象に残りました。 同日のNHKクローズアップ現代+は、「名門企業 東芝はどこへ」というタイトルで、東芝が凋落した要因を取材し分析していました。 その中で、東芝はメーカーとしてのあるべき姿を見失っていたのではないかという話が出ていました。良いものを作って利益を上げるのではなく、よい成績(数字)を出して高い評価を得るという方向性を志向した結果、アメリカの原子力事業を買収し、その後社会情勢が変化してからも方針を変えることができなかったという話であったと理解しています。 いったい東芝はどういう会社だったのか? ホームページを見てみました。今となっては経営理念や行動基準がそらぞらしく思えますが、沿革をたどると技術や事業にかける熱い思いも伝わってきて、何がどこで間違ってしまったのかとも思えます。 報道された内容などを見聞きするにつけ、俗な一個人としては、欲をかいてすべてを失うとい


転機には片づけが効く
節目には、不思議と物を片づけたくなるものですね。 節目といえば、年末年始や年度の変わり目といった定例的なものから、転勤や異動、転職あるいは退職など不定期に起きるものもあります。そういう時、気持ちに一区切りつけるという意味でも、ライフスタイルの変化に対応するという意味でも、自然と身辺の整理をしたいという思いが湧いてくるのでしょう。 私はといえば、3月末で4年間続けた役所の非常勤職を辞したこともあって、書類の大整理を今月中には済ませてしまおうと思っています。それは、時間の使い方や仕事の内容を変えるための準備でもあり、仕組み作りでもあります。 この前に大整理をしたのは、今の住まいに引っ越してきた時ですので、もう8年前のことです。今回また大整理をしたくなっているのは、気持ちの上で大きな転機を迎えていることの表れかもしれません。 ところで、転勤や転職などによる節目では、仕事の内容や仕事上の人間関係の大きな変化を伴うことが多いものです。新しい環境に慣れるまでは、自覚がなくてもストレスや不安を抱えていることがあります。 慣れた仕事から次の仕事へ移るのは、空中ブ


楽に生きるということについて
楽をするというと、眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は楽に生きられたらいいと思っています。それは、自分自身に対しても、ご相談者に対しても同じ気持ちです。 楽に生きるとは、まずはありのままの自分を認めて自然体でいられること。そうして、成長したり人や社会の役に立ったりできれば、嬉しい気持ちにもなり日々の張り合いも生まれます。 そのように考え、実践に努めています。努めているというのは、周囲の人との関わりのなかで、必ずしもそうできないこともあるというのが、現実だからではあります。 体力や気力のピークを過ぎたことを感じ、会社の中の役割も主役(管理職やリーダー)から脇役(サポーター)に移ってきたことを意識し始めて、何となく職場に居づらくなったという話を聞くことがあります。 自分がかつて主役を張っていたころに、脇役の人をどのような目で見ていたかということが、引け目を感じるか、脇役としていい味を出せる名プレーヤーになれるかを左右する一因になります。つい、他人は自分と同じ目でものごとを見ているに違いないと(無意識に)判断しがちだからです。 そして、自


キャリアコンサルティングの効果:社会編 ~経済が成長して生活水準が向上する?
「風が吹いたら桶屋が儲かる」と言いますが、「個人がキャリアコンサルティングを受けると世の中が元気になる」という研究結果が海外では報告されているとか。昨日紹介したJILPTの下村研究員のレポートに紹介されていました。 ヨーロッパでは、キャリアガイダンスが個人の進路やキャリア上の問題解決にとどまらず、国の経済に影響を与えるかどうかについて、研究テーマとして関心がもたれてきたということです。 その例としてHooley&Dodd(2015)の研究成果として、キャリアガイダンスの効果とその波及についての記述があります。以下に抜粋しますが、(1)から(4)の順に効果が波及していくのだそうです。 (1)個人的効果 (2)1次的経済効果(労働力率の増加、失業の減少、スキルや知識の増加、柔軟で移動しやすい労働市場の形成) (3)2次的経済効果(健康の増進、犯罪の減少、税収の増加、社会保障費費用の減少) (4)マクロ経済便益(赤字削減、生産性向上、生活水準の向上、経済成長) 個人的にメリットがあるから、キャリアコンサルティングを受けることを勧めるということではなく、